2章 国家ブランディングをめぐる議論
第1章で明らかにした通り、「国家ブランディング」論には、世界市場において製品・企業・産業の国際競争力を増大させることを念頭においた「経済」的な議論と、ソフト・パワーやパブリック・ディプロマシーと関連させて国家の対外的発言力や影響力を増大させることを検討した「政治」的な議論とがある。また、政治・経済いずれの議論においても、国家ブランディングは国際関係にどのような影響を及ぼすかという点に関心を寄せる、国際社会についての「認識」論的な議論と、国家ブランディングをどのように実行・実現するのかという技術的な「方法」論の二つが存在する。
そこで、以下では、政治的認識論、政治的方法論、経済的認識論、経済的方法論の四つのカテゴリーにわけて、国家ブランディング論の先行研究を整理するとともに若干の考察を加える。
国家ブランディングの政治的認識論
The Rise of the Brand State
Place Branding
ブランド国家
国家ブランディングとソフト・パワー
政治的方法論とは何か
内向きと外向き
ステークホルダー
パブリック・ディプロマシー
(1)文化
(2)外交政策
(3)政治的価値観
結び
3節 経済的認識論〜国家ブランディングは経済にどのような影響を及ぼすのか〜
グローバル・キャピタリズムの観点からの考察
グローバル・キャピタリズムとは何か
グローバル・キャピタリズム下における国家のパワー
ブランディングが国家に与える影響
ヨーロッパ圏におけるGCとNBの相乗効果
結論
国家ブランディングにおける経済方法論とは
ブランディング理論の国家ブランディングへの適用
(1)ブランディングの三要素
(2)ブランド資産価値
(3)製品の原産国(COO)
ブランド構築戦略とその実践例
(1)国家ブランド構築の戦略
(2)ブランド戦略の実践例―エジプトと南アフリカのケース
経済方法論の課題点